沖縄県内の米軍基地周辺の河川や浄水場など合計15カ所で、発がん性が疑われている有機フッ素化合物が高濃度で検出されました。
沖縄県では、汚染源が基地内にあるとみて、立ち入り調査を求めていましたが、米軍は応じてくれず、長らく原因不明のままでした。
在沖米海兵隊は2021年8月26日午前、米軍普天間飛行場(沖縄県)に保管していた有機フッ素化合物PFOS(ピーホス)などを含む汚水を、浄化して下水道に放出を始めたと発表しました。
県は沖縄防衛局や外務省沖縄事務所を通じ、排水の中止を求めています。
そもそも、沖縄の水を汚染している化学物質はどのようなものでしょうか?
沖縄の水源を汚染している有機フッ素化合物は、PFOS・PFOA・PFHxSなどと呼ばれています。
PFOS・PFOA
有機フッ素化合物の一種。発がん性などが指摘されている。
PFOSは残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で国際的に製造・使用が制限され、国内でも一部例外を除き原則的に使用・製造が禁止されている。
PFOAは世界保健機構(WHO)の外部機関が発がん性の恐れがある物質に指定し、主要な科学メーカーが既に自主的に使用を廃止している。物質としての安定性が高いため、環境中でほとんど分解せず、生物中に蓄積することが懸念されている。
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とは、発がん性などのリスクが指摘されている物質です。
PFOA(ペルフルオロオクタン酸)も、PFOSと似たような構造です。
PFOSとPFOAは国内の使用が原則禁止されています。
同様に、有機フッ素化合物PFHxSは、コレステロール値や肝機能への悪影響が指摘されている物質で、規制に向けて国際的な議論が進んでいます。
PFOSとPFOA合計値 |
備考 | |
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汚染判断の暫定指標値※ | 40 | ※米国環境保護庁(EPA)による |
那覇市や名護市など 40地点 |
70以下 | |
嘉手納町大工廻川 | 最大1379 | 嘉手納基地周辺6地点 |
北谷町北谷浄水場 | 最大120 | 大工廻川合流先の比謝川。2015年度 |
普天間市農業用水など | 最大2000 | 普天間飛行場周辺。2018年度 |
米軍の嘉手納基地や普天間飛行場周辺の河川で高濃度のPFOSとPFOAが検出されていることから、基地が汚染源だと指摘されています。
PFOSとPFOAは泡消火剤などに使われています。
米軍は2016年7月の説明によりますと、嘉手納基地内で1994年以降に4件の火災で泡消火剤を使った可能性があり、2001年以降に9件の漏出があったとのこと。
調査結果や状況から考えて、ほぼ米軍基地内が汚染源と考えて間違いないかと思われますが、日米地位協定により米軍の許可がなければ基地内の調査はできません。
2019年には、沖縄県宜野湾市の住民の血中濃度を検査されました。
比較対象として、同様に南城市の住民の血中濃度も調査されました。
調査結果により、水汚染による人体侵害の実態が浮かび上がりました。
全国平均 | 南城市 | 宜野湾市 | |
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PFOS (発がん性のリスク) |
3.5 | 6.6 (全国平均の約2倍) |
13.9 (全国平均の約4倍) |
PFOA (発がん性のリスク) |
1.5 | 2.7 (全国平均の1.8倍) |
3.3 (全国平均の約2倍) |
PFHxS (肝機能障害のリスク) |
0.3 | 3.9 (全国平均の13倍) |
16.3 (全国平均の約54倍) |
※全国平均:2016年環境省「科学物質の人へのばく露量モニタリング調査結果について」より
※宜野湾市は41名、南城市は64名に調査
このような調査結果から考えると、残念ながら、沖縄の水は安心して飲める水とは決して言えないのが現実なのかもしれません。