沖縄では、以前から米軍基地からの化学物質PFASによる水の汚染が問題視されています。
近年の詳しい調査によって、改めてその危険性が注視され、米軍基地から遠い地域の人たちへの影響までもが懸念されているようです。
化学物質PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)は、撥水剤、表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーティング剤等に使われている化学物質の総称です。
熱や薬品に強く、水や油をはじくなどの性質がありますが、その強い性質ゆえに自然界や体内で分解されにくく、英語で「Forever Chemicals(永久に残る化学物質)」と呼ばれ、分解されずに蓄積されやすい性質があります。
4000種類以上あるとされるPFASの中でも、特に有名なのは、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)とPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)の2つです。
いずれも人体に取り込まれると、高脂血症、動脈硬化、糖尿病、甲状腺機能低下症、肥満、出生時体重の減少など、様々な健康への悪影響が報告されています。
近年では、コロナワクチンの抗体形成への悪影響も懸念されているようです。
米マクドナルドは2021年1月に、2025年までに全ての包装・容器からPFASを全廃すると発表。また、アマゾンも2021年12月、自社ブランド「Amazon Kichen」の食品製品の包装・容器で同じくPFASの使用を禁止しています。
2016年1月20日の琉球新報により、嘉手納基地から流れ出る大工廻川(だくじゃくがわ)が高濃度のPFOSで汚染されていることが判明。
その大工廻川は、北谷浄水場の水源である比謝川に合流し流れ込んでいるので、有毒な化学物質で汚染された水が、県下7市町村45万人の県民に供給されていたことが知られるようになりました。
その後の調査によって、基地で使われる消火剤に含まれる成分が原因であるとされています。
2022年4月の県民大会で、沖縄県下6市町村7地区の県民の血液検査によって人体への汚染の実態調査が行われました。
検査数 [人] | 米国目安値 超過 [人] | |
---|---|---|
北 谷 | 59 | 45(76.3%) |
金 武 | 54 | 36(66.7%) |
宜野湾(喜友名) | 50 | 32(64.0%) |
宜野湾(長田) | 59 | 28(47.5%) |
沖 縄 | 56 | 29(51.8%) |
嘉手納 | 51 | 24(47.1%) |
大宜見 | 58 | 15(25.9%) |
合 計 | 387 | 209(54.0%) |
※ 有機フッ素化合物(PFAS)汚染から市民の生命を守る連絡会より
米国の3学術団体が22年7月に連名で示したガイダンスでは、健康対策を要する目安値は、PFAS7種の合算で血液1mL当たり20ng(ナノグラム)以上とされています。
この目安値を基に分析すると、検査を受けた人の半分以上の54%の人が血中に基準を超える汚染物質が蓄積されていて、何らかの健康対策が必要とされる結果となりました。
北谷浄水場の影響が大きい市町村と比較対照のために、米軍基地のなく、PFAS汚染がされていない水道水が給水されている大宜味村でも血液検査が行われました。
水道水からの汚染はないはずなので、PFASの血中濃度は低いはずですが・・
調査結果では、特にPFASの代表的成分の一つであるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)の血中濃度に問題がありました。
全国平均 | 大宜味村 |
---|---|
3.9ng/mL | 5.8ng/mL |
汚染が少ないはずの大宜味村でも全国平均と比較すると約1.5倍です。
ちなみに、今回調査した全地域の調査対象者387人のうち、約80%となる300人を超える人が全国平均を上回るという結果となりました。
飲み水からの影響がほとんどないはずの大宜味村民までも、PFASに汚染されているのは、なぜなのでしょうか?
ここで、怖~い推測がなされています。。
PFASの人体への侵入は、飲み水からの影響が一番大きいことは確かでしょう。しかしながら、飲み水だけではなく食べ物からの人体への侵入経路も考えられます。
疑われているのは、宜野湾浄化センターの余剰汚泥から作られていた有機肥料です。
2021年8月に、普天間基地がら大量のPFASが放出され、宜野湾浄化センターに流入しました。
ここで濃縮されたPFASが有機肥料内に含まれて、県内各所に拡がっているというのです。
この有機肥料で育てられた農作物に、肥料内に含まれていたPFASが吸収されて、それが人体に入り込んでしまっているのではないか、との疑いがあるというのです。
これが事実だとすると、知らないうちにPFAS汚染は全県民に拡がっていると言っても過言ではないわけです。。。
残念ながら、米軍基地が近くにないから我が家は安心、とは言えないのが実状なのかもしれません。。
今回の血液調査では、事前にアンケートによって、対象者を2つのグループに分けていました。
A:水道水をそのまま飲用利用している
B:水道水をそのまま飲まず、ウォーターサーバーやボトル入りの水、浄水器などを利用
B グループの比率ですが、北谷浄水場の給水区域4地区では、Bグループが約8割(73〜84%)を占め、他の3地区(28〜52%)と比べて自衛策をとっている家庭の割合がかなり高いことが分かりました。
さらに、BグループのPFAS血中濃度は、Aグループより明らかに低いことが判明しました。
現段階では、人体への悪影響を最小限に抑えるためには、なにかしらの飲料水への自衛策をとることが最善のようです。